KBS京都で放送中の『谷口流々』。
谷口キヨコが、京都を中心に活躍する人々の仕事現場に足を運び、十人十色の人生哲学を紐解いていきます。
2024年2月3日(土)の放送では、製麺所代表の知見芳典さんに話を伺いました。
Profile:製麺所代表・知見芳典さん
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知見芳典さんは、中華麺専門の製造卸『麺屋棣鄂(めんやていがく)』の3代目です。全国各地のラーメン店にオーダーメイドの中華麺を納品しています。

『麺屋棣鄂』は、お店ごとのスープの個性にあった麺をオーダーメイドで作っており、現在は常に200種類以上の麺を製造しています。
オーダーメイドで麺の改良を繰り返した結果、開発に1年かかった麺もあるそうです。
製麺所を継ぐ

知見さんは製麺所の3代目。父親からは「製麺業は先がないから継がなくてもいい」と言われていたそうです。継ぎたいと思う前にこの言葉を言われたため、自分は家業を継がないものだと思って育ってきたのだそう。

高校を卒業してからヨットをしていた知見さんでしたが稼ぐことは厳しく、2年で地元に帰ってきました。その時は燃え尽き症候群になっていました。
その後、ビル清掃の会社で働き始めます。自分に仕事が合っていたのか、すごい勢いで出世していったそうです。30代で会社の上のポジションまで登り詰めましたが、60代までこの仕事をすると考えた時に“ゾッと”してしまったとか。
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悶々とした日々を過ごしていたタイミングで、父親が脳梗塞で倒れてしまいます。継がなくていいと言っていた父親から電話で「帰ってきてくれ」と言われました。
最初は継ぐことに戸惑いますが、知見さんは次のステージに行けるような気がして継ぐことを決心します。ただ、継いだ時に会社の経営状態は大赤字だったそうです。
オーダーメイド麺で勝負
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製麺業界に詳しくなかった知見さんでしたが、危機感を持ち「自分がラーメン店主だったらどういう麺が欲しいだろう」と考え突き詰めた結果、“自家製麺代行のオーダーメイド”に行き着きます。
元々、ラーメン以外にうどん等の他の製麺も行っていましたが、オーダーメイドが波に乗ってきたタイミングで一本に絞ったそうです。
ラーメンの麺は、ラーメンの他にもつけ麺として食べることもありますが、“つけ麺”との出会いが事業を拡大していくきっかけにもなりました。

当時、関西でつけ麺のお店を開くためには関東から麺を仕入れなければいけない時代でした。
たまたま工場の近くに『京都千丸 しゃかりき』がオープンし、「つけ麺をやりたいけど、東京から仕入れているから麺を作ってほしい」とオーダーメイドの依頼が来たそうです。この『京都千丸 しゃかりき』の麺こそが約1年かかった麺開発でした。
東京で修行していた『京都千丸 しゃかりき』オーナーの梶さんの頭の中には、つけ麺の完成系が出来上がっており、「私たちを育ててくれたお店と言っても過言ではない」と知見さんは感謝しているそうです。
最後、納品した時に「これで完成やな」という言葉は今でも忘れられないとか。
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その後、関西でつけ麺ブームが始まりました。つけ麺は麺が主役と言われており、製麺所が評価されやすいとのこと。
『京都千丸 しゃかりき』でつけ麺が人気になった時、ちょうどSNSが流行し『麺屋棣鄂』の知名度が一気に広がり、関西だけでなく関西以外の方からも注目を集めるようになりました。
飛び込み営業はしない
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対談シーン"
『麺屋棣鄂』の営業スタイルは、飛び込み営業を一切しておらず口コミや紹介のみで行っています。麺のことで困っている店に営業をすることにしているそうです。
続いて、麺をいくつかご紹介していただきました。

『OSP(オールド札幌)』は、札幌の老舗味噌ラーメン店のオーダーメイド麺で、古き良き札幌の麺を再現しています。
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『MTR(ウイング)』麺です。『麺屋棣鄂』にしかない特殊な麺で、断面がT字型になっています。これは、和え麺や台湾まぜそばに使われており、麺の構造でミンチされたお肉が絡まりやすくなっています。

『サンダー』は稲妻をイメージしてギザギザしています。山形県や喜多方ラーメンの東北の手揉麺をオマージュしたものです。手揉麺はお店の方が一つ一つ揉んでから入れるため麺の太さにばらつきがあるそうです。その手揉麺を甚だしくしたのが『サンダー』という名前の由来になっています。
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現在、『麺屋棣鄂』では全国45都道府県のラーメン店に麺を提供しています。47都道府県、全て麺事情が違っているそうで、残るは大分県と佐賀県です。
「佐賀と大分は、局所的にラーメン愛が深く製麺所まで抱えて愛している。そこの麺を打つのは大変な作業」と知見さんは話します。
45都道府県の麺を製造しているなんて、すごいことですよね!
知見さんを表すことば
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今回の“知見さんを表すことば”は、『あとふたつ』です。
日本ではあと2県ですが、今後、世界にもオーダーメイド麺を提供する日が来るかもしれませんね!
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文/西門
【画像・参考】谷口流々(毎週土曜日9:30~10:00) – KBS京都
※この記事は、2024年2月3日(土)放送時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。